新規参入でバリューチェーン分析を行う理由
化粧品事業への新規参入を目指す場合、まず「自社にどんな強み・弱みがあるのか」を分析することが重要です。競合他社に対して優位な点・不利な点がわからなければ有効な事業戦略も策定できず、ヒットする製品を生み出すこともできないからです。
そんなときに役立つのが「バリューチェーン分析」です。バリューチェーン分析を行えば、自社の強みと弱みが明確になり、製品開発を行う上で重視するべきポイントも自ずと見えてきます。
バリューチェーン分析とは?
事業活動は、販売・製造・マーケティングといったいくつかの工程の集合体とみなすことができます。事業で複数の工程が必要とされるのは、それぞれの工程において消費者に求められる何らかの「価値」が生み出されているからです。このような観点からみると、事業活動は「消費者に求められる価値を生み出す工程の連鎖」ととらえることも可能になります。
このように、事業活動を「価値を生み出す工程の連鎖」と考え、個々の工程がどのような価値を生み出しているか、どんな強み・弱みを抱えているかを分析する方法のことをバリューチェーン分析とよびます。
バリューチェーン分析の方法
具体的にどうやってバリューチェーン分析を進めれば良いのかご説明しましょう。バリューチェーン分析は大きく3つのステップに分かれます。
①事業活動を主活動と支援活動に分類する
主活動とは、製品が生み出されてから消費されるまでの流れに直接関係する工程のことです。たとえば、製品企画・製造・出荷・マーケティングといった行程が該当します。もうひとつの「支援活動」とは、主活動を支えるために行われる活動のことです。これらは製品の生産・消費に直接関わるわけではありませんが、主活動を通じて間接的に影響を及ぼしています。一般的な企業であれば、総務部や人事部が行っている文書管理や労務・研修などの活動をイメージするとわかりやすいのではないでしょうか。
バリューチェーン分析は、事業を主活動と支援活動に分類した一覧表を作るところからスタートします。主活動は生産から消費までの流れに沿って左から右に順番に並べ、その上に支援活動をまとめると事業の全貌を把握しやすくなるでしょう。
②各工程の強み・弱みを分析する
先に分類した各工程について、それぞれ強みと弱みをリストアップしていきます。各工程でかかっているコストや担当部門などをリストアップした表を作成し、ひとつひとつを競合他社と比較していくやり方がわかりやすいでしょう。たとえば、マーケティング活動などは、他所の会社がどのような施策を行っているかはわかりやすいはずです。自社事業への理解が深まるとともに、足りないところを明確にする効果もあります。
③VRIO分析で各工程の競争優位性を明確にする
単純に強みと弱みをリストアップしただけでは、各工程を同じ基準で評価することはできません。そこで最後にVRIO(ヴェリオ)分析を行います。VRIOとは、それぞれ以下のような意味を持つ単語の頭文字に由来する言葉です。
Value(価値) :事業にもたらす利益
Rareness(希少性):市場・業界内での貴重さ、珍しさ
Imitability(模倣可能性):同業他社による真似のしやすさ
Organization(組織):組織内での評価、協力体制
各工程を縦軸、「VRIO」を横軸にした表を作成し、4つの項目についてそれぞれ点数をつけていく、という方法がもっとも簡単です。合計の点数が高い工程ほど、「競合他社にとって強みを持っている」ということになります。
以上、3つのステップを順番に行うことで、事業を構成する各工程のどこに強みがあり、どこに弱みを抱えているのか、点数という共通の基準を使って把握することが可能になりました。
バリューチェーン分析の結果を事業活動に反映させよう
バリューチェーン分析を行い、自社の強みを弱みが明らかになったのなら、それを元に今後の事業活動を改善していかなければなりません。分析結果をどのように解釈するかによって取るべき道は変わってきますが、化粧品事業の場合、「弱みのある工程はアウトソーシングする」という方法があります。
強みのある工程については、すでに競争優位性を持っているわけですから、そのまま自社で継続して行っていけば問題はないでしょう。一方、弱みのある工程に対しては何らかの改善策を実施しなければなりませんが、もともと弱い部分を改善するのには時間も労力もかかってしまいます。
化粧品事業の場合、OEM(受託製造)を利用することで、製品の企画・開発・製造など、複数の工程を自社外にアウトソーシングすることが可能です。弱みのある工程をアウトソーシングすれば、自社の経営資源は強みのある工程を強化することに回せるので、より効率的に事業活動を進めていくことができます。化粧品事業への新規参入を目指している企業は、バリューチェーン分析を行い、OEMを活用しながら化粧品開発に取り組んでみてはいかがでしょうか。