業界の注目キーワード「パーソナライズ」個人分析で1to1の商品づくり
現在、化粧品業界で注目を集めているキーワードが「パーソナライズ」です。耳慣れない言葉なので、どんな意味なのか聞いただけではイメージできないという方も多いかもしれません。
今回は、「パーソナライズ」とはどんなものなのか、具体的に化粧品業界の企業がパーソナライズの概念を取り入れた商品づくりにどのように取り組んでいるのかをご紹介しましょう。
「パーソナライズ」とは何か
パーソナライズ(Personalize)とは、ユーザー一人ひとりに合わせて、最適化された商品・サービスを提供することです。従来、化粧品は不特定多数のユーザーに対して、同じ商品を提供するのが普通でした。たとえば、「20代女性向け化粧水」という商品であれば、「20代の女性」というふうにある程度ターゲット層を限定してはいるものの、条件に当てはまる人すべてに単一の商品を提供していたわけです。
これに対して、パーソナライズ化された化粧品は、ユーザーごとに提供する商品の中身が変わります。先ほどの「20代女性」というターゲット層について考えてみましょう。年齢が同じでも、ユーザーによって抱えている悩みは同じとは限りません。お肌の乾燥に悩んでいる方もいれば、シミや黒ずみに悩んでいる方もいるでしょう。このように、一人ひとりが置かれた状態や抱える悩みの違いに合わせて、最適化された商品を提供するのがパーソナライズの考え方なのです。
業界でのポジショニングが重要
なぜ今パーソナライズが注目されているかというと、「業界でのポジショニング」と関連が深いからです。化粧品業界は、特にユーザーごとに悩みの違いが細かく分かれており、なかには大手企業ではなかなかターゲットにしづらいニッチな悩みも存在します。
しかし、ニッチな悩みとはいっても、市場全体の規模自体は大きいので、上手にアプローチができれば業界内に確固たる地位を築くこともできます。そのため、化粧品業界に確かなポジションを築きたい企業や、新規参入を目指している企業は、パーソナライズに注目して、大手との差別化を図っているのです。
企業が取り組むIoT戦略
パーソナライズの概念を商品づくりに取り入れる方法として有効なのが、モノをインターネットとつなぐ「IoT戦略」です。パーソナライズ化された商品をつくるためには、肌の状態や質、抱える悩みといった属性の違いをデータとして把握しなければなりません。そのためには、ユーザー一人ひとりの属性をデータベースに保存し、工場や店舗など必要となる場面にスムーズに提供するIoTの仕組みが不可欠なのです。すでにいくつかの企業は、IoT戦略を取り入れたパーソナライズ化商品の提供をはじめているので、そうした事例を3つご紹介しましょう。
資生堂でデジタルカウンセリングミラーの導入
資生堂は直営店である「SHISEIDO GINZA SIX店」において、2017年7月から「デジタルカウンセリングミラー」を導入しました。これは、タッチパネル操作が可能なデジタルディスプレイの鏡で、商品の使用方法や肌測定の結果などの情報提供に利用できるものです。QRコードを表示し、お客様が自宅に戻ってからカウンセリングの結果を再度確認してもらうことも可能にしています。
Function of Beatutyのカスタムシャンプー
アメリカ発のコスメブランド「Function of Beatuty」が提供しているのは、自分専用のカスタムシャンプー・リンスが作れるサービスです。髪質や求める効能、好みの香りなどを伝えると、自動的に必要な成分を逆算してその人だけのシャンプー・リンスを作成してくれます。組み合わせの数は120億通りもあるため、文字通り「自分だけのシャンプー・リンス」が手に入ります。
スマホを使ったカスタムファンデーション
同じくアメリカのコスメブランド「bareMinerals」は、自分の肌に合わせたカスタムファンデーションを手軽につくれるアプリ「Made-2-Fit」を提供しています。使い方は簡単で、アプリを起動してスマホを額や顎などの決められたポイントに当てるだけ。自動的にデータが分析され、ボトルに自分の名前が刻印されたファンデーションが送られてきます。
「あなただけの商品」を遡求してブランド価値を高めよう
今回ご紹介した事例の中でも、特にアメリカの2社は大企業とはいえない規模ながら、業界内に確かなポジションを築いています。商品のパーソナライズ化により、「他所にはない『自分だけの商品』を提供してくれる企業」というイメージを獲得することに成功しているといえるでしょう。
このように、パーソナライズに注目した商品づくりは、化粧品事業の拡大や新規参入に非常に有効です。ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。