化粧品業界への参入が増えている理由とは?
化粧品業界でビジネスを行うには、美容に関する専門知識とノウハウが必要です。そのため、異業種からの参入は難しいと思われがちですが、実は、伝統的に他分野から進出してくる企業が多い業界なのです。
特に、1960年代、知識やノウハウが流用しやすい医薬品業界からの参入が始まったのを皮切りに、1990年代にはアルコールメーカーなど加工食品を扱う企業の参入が増加してきました。
今回は、そんな「化粧品業界への異業種からの参入」について詳しくご紹介します。
異業種から化粧品業界への参入を果たした意外な企業
富士フイルムの事例
カメラや写真・映像用のフイルムで知られる富士フイルムですが、2006年にスキンケア商品のブランド「アスタリフト」を立ち上げ、化粧品事業を開始しました。実はフイルムの原料には肌の主成分と同じコラーゲンが使われています。ほかにも写真の色あせを防ぐ「抗酸化技術」が肌のシミ・シワ対策に役立つなど、化粧品づくりと相性がいい技術的な土壌があったのです。
味の素の事例
「うま味調味料」などの食品事業で知られる味の素も、1997年から化粧品販売を開始しています。同社がうま味調味料の開発で研究してきた「アミノ酸」は、肌の保湿に役立つ「天然うるおい成分」です。現在ではアミノ酸を活用したスキンケアブランド「JINO(ジーノ)」で多数の商品を展開しています。
化粧品業界へ参入する企業が増えている理由
このように他業種から化粧品業界に参入する企業が増えている背景には、「本業で培った技術を応用できる」というメリットがあります。化粧品以外の業界でも保有技術を応用できる可能性はありますが、化粧品業界なら本業で研究を重ねてきた材料を商品の「独自成分」として使うことで、競合に対する明確な差別化が図りやすいのです。
また、化粧品業界自体の将来性が注目を集めていることも、新規参入が増えている理由の一つになっています。日本全体で人口減少が進むなか、比較的人数の多い「団塊ジュニア世代」は「お肌の曲がり角」ともいわれる40~50代を迎えます。この世代をメインターゲットにすれば、一定の購買層獲得が期待できる点も見逃せません。
化粧品業界への参入を目指す際の注意点
以上のように、「既存のノウハウを独自の強みとしてPRしやすいこと」「市場としての将来性が見込まれること」の2点から、化粧品業界への参入を目指す企業は少なくありません。
しかし、まったく経験のない分野へ参入するわけですから、注意しなければならないこともいくつかあります。「化粧品の企画・開発をいかにして行うか」「生産に必要な設備・ノウハウをどうするか?」、「販売体制をどう構築するか」というように、直面する問題も出てくるでしょう。こうした問題を自社だけで解決するのは容易ではないといえます。
自社の力だけ化粧品業界に参入するのが難しい場合、他社ブランドの化粧品を受託製造するOEMメーカーと協力して参入を目指すという方法もあります。「化粧品業界に参入したいが、事業の立ち上げをどう進めたらいいかわからない」とお悩みの方はぜひ検討してみてください。